決算書は毎月チェックしていても、自分自身の資産については「なんとなく」で済ませていないでしょうか。会社の数字には敏感な経営者ほど、個人の資産管理は後回しになりがちです。この記事では、経営者が50代を迎える前に見直しておくべき理由を解説します。あわせて、個人資産の「設計図」を整理する具体的なステップも紹介します。
経営者の個人資産が「なんとなく」になりやすい理由
なぜ経営者は、会社の数字には詳しくても、個人資産の把握が甘くなりやすいのでしょうか。日々の業務では会社の数字と向き合う時間が多く、自分自身の資産にまで意識を向ける余裕がなくなりがちです。数字に強い経営者でも、個人の資産となると話は別だという声もよく聞かれます。背景には、経営者特有の2つの理由があります。
決算書のチェックに意識が向きやすいから
日々の業務では、会社の売上・利益・キャッシュフローを確認することが習慣になっています。数字を確認することが日課になっている経営者ほど、その意識が会社の外にまで向きにくくなるものです。会社の数字に真剣に向き合っているからこそ、個人の数字は後回しになりやすいともいえます。一方で、自分自身の資産がどのように構成されているかを定期的に確認する機会は、意識しない限り生まれにくいものです。
会社の資産と個人の資産の境界が曖昧になりやすいから
中小企業の経営者は、個人資産の多くが自社株や事業用不動産で構成されているケースが少なくありません。会社の資産と個人の資産が実質的に一体化しているのです。そのため、「自分個人の資産がいくらあるのか」を正確に把握しづらい構造になっています。会社員であれば給与や貯蓄で個人資産が把握しやすいのに対し、経営者ならではの難しさだといえます。
50代を迎える前に資産を見直すべき理由
なぜ「50代になる前」というタイミングが重要なのでしょうか。年齢を重ねるにつれて、資産をめぐる状況は少しずつ変化していきます。早すぎる、遅すぎるということはありませんが、50代を迎える前後は特に意識しておきたい節目です。この時期を境に、考え方を切り替えている経営者は少なくありません。ここでは、その理由を2つの視点から見ていきます。
事業承継・相続の準備には時間がかかるから
事業承継や相続に関する対策は、検討から実行まで数年単位の時間がかかることが少なくありません。相続が発生してから慌てて自社株の評価や後継者への承継方法を検討するのでは、選べる選択肢が限られてしまいます。準備不足のまま相続が発生すると、想定外の税負担や親族間のトラブルにつながりかねません。早めに着手するほど、取れる対策の幅は広がります。
リスクを抑えた資産配分に切り替える時期だから
50代は、子育てにかかる費用が落ち着き始める一方で、リタイア後の生活を見据え始める時期でもあります。若い頃と同じ感覚でリスクを取り続けると、いざというときに資産を大きく減らしてしまう可能性もあるでしょう。積極的にリスクを取る資産運用から、守りを意識した資産配分へと切り替えていくことが求められます。そのタイミングとして、50代前後は一つの節目になります。
会社の借入の連帯保証が個人資産にも影響するから
中小企業の経営者は、金融機関からの借入に対して個人で連帯保証をしているケースが少なくありません。連帯保証をしていると、万が一会社の経営が悪化した場合、返済義務が個人にも及びます。会社の資産だけでなく、自宅や個人の預貯金まで返済に充てなければならない可能性もあるのです。個人資産を把握しておくことは、こうした万が一の場面への備えとしても重要な意味を持ちます。
資産の設計図を見直す3つのステップ
具体的に何から着手すればよいのか、3つのステップに分けて考えてみましょう。何から手をつければいいか分からないまま後回しにしてしまう経営者も少なくありません。難しく考える必要はなく、一つずつ順番に取り組めば十分です。忙しい日々の合間でも、少しずつ進めていくことができます。順を追って整理していけば、無理なく資産の全体像を把握できるようになります。
ステップ1:個人資産と会社資産を棚卸しして分けて把握する
まずは、自社株・事業用不動産・個人名義の預貯金や有価証券など、資産の種類ごとに整理してみましょう。「会社のものか、個人のものか」という視点で分けていくのがポイントです。一覧にして書き出すだけでも、頭の中だけで把握していたときとは見え方が変わってきます。境界が曖昧なままでは、次の対策も検討しづらくなります。
ステップ2:非課税制度の活用を検討する
個人名義の資産形成については、NISAやiDeCoといった非課税制度の活用も選択肢の一つです。すでに事業に資産を集中させている経営者ほど、個人資産の分散先として検討する価値があります。事業と個人、両方の資産を持っておくことで、万が一のリスクにも備えやすくなります。ただし、資産を分散させすぎると管理の手間が増えるという側面もあるため、無理のない範囲で取り入れることが大切です。
ステップ3:事業承継・相続について専門家に相談する
自社株の評価や相続税の試算、事業承継のスキーム選定は、税理士や弁護士など専門家の知見が必要な領域です。自己判断で進めてしまうと、後から想定外の税負担が発生することもあります。餅は餅屋という言葉のとおり、専門分野は専門家に任せる方が結果的に安心です。早い段階で専門家に相談し、自社に合った対策を一緒に整理していくことをおすすめします。
資産管理会社という選択肢
経営者の資産設計では、個人名義での資産形成に加えて「資産管理会社」という選択肢を検討する経営者もいます。資産を法人で保有することで、税負担や事業承継の面でメリットが得られる場合があるためです。すべての経営者に必要というわけではありませんが、知っておいて損はない選択肢です。ここでは、資産管理会社の基本的な仕組みと、検討する際に押さえておきたいポイントを紹介します。
資産管理会社とは何か・活用するメリット
資産管理会社とは、株式や不動産などの資産を管理することを目的に設立する法人です。自社株を資産管理会社に保有させることで、株式の評価額を抑えられ、相続税の負担軽減につながる場合があります。後継者への株式の引き継ぎや議決権の集約がしやすくなる点も、事業承継を見据えるうえでのメリットです。所得の種類によっては、個人で保有するより税負担を抑えられるケースもあります。
デメリットと検討すべき資産規模の目安
資産管理会社の設立には、合同会社でおよそ15万円、株式会社でおよそ30万円程度の費用がかかります。設立後も、決算や株主総会の開催など、法人としての維持・運営の手間が発生します。赤字の年であっても、法人住民税の均等割は必ず発生する点にも注意が必要です。一般的には、一定額以上の資産を保有する場合に検討価値が出てくるとされています。設立を急がず、専門家に相談しながら判断することをおすすめします。
まとめ
- 経営者は会社の数字に意識が向きやすく、個人資産の把握が「なんとなく」になりがち
- 事業承継や相続の準備には時間がかかるうえ、会社の借入への連帯保証が個人資産に影響することもあるため、50代を迎える前の見直しが望ましい
- 個人資産と会社資産の棚卸し、非課税制度の活用、専門家への相談の3ステップで整理を進める
- 資産管理会社は税負担・事業承継の面でメリットがある一方、設立・維持コストもあるため、資産規模に応じて検討する
自分自身の「資産の設計図」を持っておくことは、事業の継続と、その先の人生設計の両方を支える土台になります。
この記事について
経営者向けコラムの執筆サンプルです。専門的な判断が必要な内容には必ず「専門家への相談」を明記し、断定的な表現を避けて執筆しています。
同じ流れで、ご依頼のジャンル・読者層に合わせたコラムを執筆します。
執筆のご相談はこちら